2010年01月


 幸せと福で幸福と書く。

実は私には鬼門がある。

あと一歩,この一歩がなんと遠いことだろうか。

昔話に「京とお月様どっちが遠いいの?」というお話がある。

私は目前に本当に幸せがあるというのに、

その一歩が踏み出せない。

立ち上がれない。

距離にしたら数メーター,いや数十センチとは言わないが、

1メーター前後ではないだろうか。

転がるだけでも、本当の幸せがある。

あ~,暖かい。なんとなく気持ちが良い。

かりそめの幸せに身をゆだねる。

「朝か。。。。」

いつの間にか眠ってしまう。

狭い我が家、

布団はすぐ其処にあるというのに。


85番

冬の夜に  閨(ねや)思う心  明けやらで

      コタツのはしに  安らかりけり


 ずっと昔「まだ若いね。」といわれ続けていたころ,

私の胸の中には、いつも不安が渦巻いていた。

妻を娶り人の親となり子供が大人に近づく今,

私の胸のうちには、何かにつけた不満がトグロを巻き、

鎌首を持ち上げる。

「ごめんよ」の一言が言えるようになるのに何十年もかかった。

過ぎ去りしワンシーンが走馬灯のように駆け巡る。

なぜあの時、「ありがとう。」の一言が言えなかったのか。

これから先、「いいよ。」といえる日が来るのだろうか。

「わかった。」と言って朝を迎える人がいる。

 人は過ぎ去った時間に戻ることは出来ない。

そっとお休み。

せめて、

このひと時、時計の針を止めることが出来たなら。

窓の外に底冷えの風が吹く。

人は過去を取り戻すことが出来るのだろうか。

無常の声が響き渡る。

 「 朝 だ 。 起 き ろ 。」 


 この世が黒と白の二色しか存在しない世界だとしたら、

黒く枯れた大地に冬が訪れ、桜の枯れ木に積もった雪を見たなら、

人は其れを雪の桜と呼ぶだろうか。

誰もが樹氷の花の乱舞に「綺麗だね」と声を掛けるだろうか。


 第 53番

なげきつつ 一人はしとる 夜(よる)なべは いかにわびしき ものとかは知る



 朝は朝星,夜は夜星。

おぼれる者は藁をもつかむ。

いや、天の恵みかもしれない。

ともかく、背に腹はかえれない。

年末から、突貫工事の現場にご招待いただいた。

いながらの改修工事だ。

夜も昼もあるがない。

かつて24時間闘う戦士がもてはやされた。

ひさしぶりに、朝飛び出して次の日の朝に帰る日々を繰り返している。

リゲイン。

アイ アム ナポレオン?

戦場は、男を罵声と混沌の世界に導く。

異常な時の連続は、睡魔さえ寄せ付けない。

気迫がみなぎる。血圧が上がる。

激しく脈打つ鼓動の連続。

紫煙の渦の中に体を浮かべる。

カイカ~ン。

カツテ、先輩は言った。

「ハマちゃん、倒れても俺がいるぜ。」

叫びながら走り続けた昔を思い出す。

振り向くな。

振り返っちゃいけない。

前を見て進むんだ。

トラだ。トラになるんだ。

あの時もそうだった。

疲れ果てて振り返ったとき、誰もいなかった。

サインはV?

気をつけなくっちゃね。

陀多が見たものは、一体なんだったのだろうか。

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